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■ 平成14年度 10月 葛飾区立小学校 学校飼育動物 訪問調査 報告書
 
1 調査の目的
 
 

 葛飾区立小学校で飼育されている学校飼育動物の現況(頭羽数、飼育状況等)を 正確に把握し、また、飼育担当教諭から現在かかえている動物飼育上の問題点や 意見を直接聴取することで、葛飾区獣医師会として適切な提言や飼育指導を行い、 学校飼育動物の飼育環境の改善に役立ててもらうことを目的とする。

 
 
2 調査対象校
 
 訪問日時の調整ができないなど、諸般の事情により訪問できなかった数校を除く、 葛飾区立小学校のほぼ全校(計43校)を調査対象とした。

 
3 調査方法
 
   平成14年3月1日より同年6月末日までの4ヶ月間に、葛飾区獣医師会会員 が1人当たり3〜4校を担当し、事前に訪問日時を予約した上で各学校を訪問した。
 現地では担当教諭立会いのもと、飼育舎の現況確認ならびに飼育担当教諭から の聞き取り調査を行った。
 飼育舎の視察では、設置場所、日照状況、床材の種類、衛生状態、隔離室や資材 置き場の有無などについて確認し、聞き取り調査においては動物間のいじめの 有無、餌の種類と確保法、休日対策や児童との交流法、その他について話を伺った。

 
 
学校飼育動物訪問調査 結果
 
  (1)葛飾区内の学校飼育動物の種類および頭羽数(調査対象:43校)

 

(単位:校)

(2)飼育舎の状況
設置場所及び日照状況 優 11  良 25  可 6  不可 1 
床材  コンクリート 27  砂 2  土 18  その他(金網・スノコ)
給水器、食器等の洗浄状況  優 2  良 18  可 13  不可 10 
糞尿処理状況  優 1 良 10  可 20  不可 12 
消毒薬の有無  有り 2  無し 41 
隔離室と資材置場の有無  有り 27  無し15
 


(3)飼育法
動物間のいじめ   有り:7  無し:32  不明:4 
餌の内容   ・ラビットフード(24) ・配合飼料(18) ・残り物(18) ・ペレット(9)

餌の確保法  学校負担:41 教員負担:0 児童負担:0 その他:2(給食の残り・八百屋から残り野菜を頂く)
休日対策  有り:29  無し:12 不明:2 
児童との交流法 ・飼育委員による動物の世話と管理(16)
             ・一年生生活科の授業(動物の生態及び命の尊さを通じた情操教育)(5)
              ・写生会で飼育動物の絵を描く(2)

(4)学校から葛飾区獣医師会に対する要望事項、意見など
・無計画な繁殖を防止するための、去勢・避妊手術の実施(5)
・飼育法や疾病予防対策および人畜共通感染症を中心とした
 公衆衛生についての講習会の開催(4)(生徒と教師それぞれを対象に)
・長期休暇中(土日を含む)の飼育管理法について指導してほしい
・教員の人事異動時の飼育管理の引継ぎ時に飼育指導を希望している
・学校飼育動物の死を通じて、命の尊さを啓発する資料や活動をお願いしたい。
・学校飼育動物の繁殖時(分娩、子育て等)の管理法を教えて欲しい
・診療時間以外でも学校飼育動物を診察できるように配慮して欲しい
・飼育動物の繁殖による近親交配を防ぐ目的で、他校との交流(里親等)を深めたい

(5)学校側と獣医師の懇談及び指導内容
・飼育舎の改修(逃亡防止、寒冷対策、雨水対策)(9)
・掃除等衛生指導(消毒薬の設置)(5)
・各疾病動物(肥満、下痢、皮膚病、過長爪、食餌指導、糞便検査、人畜共通感染症)に対しての対処の方法
・遺体処理の方法(獣医師会への連絡)(5)
・飼育担当者による定期的な検討会の開催(3)
・無料診察券の活用
・夏休み中の飼育管理についての徹底
・種類別、雌雄別に分けて飼育させる

 

 
考察
 
飼育動物の種類
 ウサギ、鶏(チャボ、ウコッケイを含む)が圧倒的に多い状況である。続いてカメ、 ハムスター等が飼育されている。

飼育舎
設置場所:43校中42校で可以上。1校が不可(老朽化のため改築要望を出している)
床はコンクリート、土間が多い。
給水、食器洗浄:43校中33校が可以上。不可10校 (食器の汚れ、水をこまめに取り替えていない)
糞尿処理状況:43校中31校で可以上。12校不可。(糞尿が飼育舎の周囲に散乱)
消毒薬の有無:43校中2校で有り。 41校が無し。
隔離室と資材置場:42校中27校で有り。15校無し。

飼育法
いじめ 43校中7校が有り。32校が無し。
餌内容 : ラビットフード、配合飼料および給食の残りが多い。
餌の確保 : 学校で予算負担をしているケースが大多数である。
休日の飼育管理 : 43校中12校の学校で行われていない状況である。
児童との交流 : 1年生の生活科の授業で取り扱っている学校が5校あった。
その他は飼育委員による日常の管理のみで、全体的に児童との普段の交流は非常に少ない印象を受けた。

学校側からの要望
 獣医師会による飼育講習の実施、避妊及び去勢手術の要望が多かった。

指導内容については
 飼育舎の改修を含めた衛生管理の徹底。遺体の取り扱い、疾病動物に関する対処法 について指導した。

 

総評
 
  現在、国内のほとんどの学校ではウサギ、ニワトリ、チャボおよびハムスターなどの小動物を 飼育している。教育上の観点からいえば、これらの動物たちは命の大切さやはかなさ、 動物を飼うことの責任の重さなどを子供たちに教え、ひいては子供たちの心の教育を行う上 で大切な役割を担っているともいえる。
 しかしながら、実際には社会全体に人間中心の考え方が浸透しており、また、飼育担当者に動物飼育上の正確な知識が行き届いていない状況もあり、学校の動物たち全体に快適で十分 な飼育環境が与えられているとは言いがたい。
 葛飾区獣医師会では、葛飾区教育委員会のご協力とご理解のもと、区内43校の区立小学校 を対象に、はじめて学校飼育動物の訪問調査を行った。

 葛飾区立小学校で飼育されている動物たちの健康状態は概ね良好で、飼育舎も堅牢で立派 なものが多く、私たちの予想を大きく上回るものであった。また、各学校が限られた予算や 制度の範囲内で工夫しながら努力していることも大いに評価できる点である。
 動物の種類はウサギが180頭と圧倒的に多いが、ウサギは穴を掘って巣とする習性があるため、頭数が正確に把握できない学校もあった。無節制な繁殖が放置されていることと、 穴の中で斃死するウサギがいるために頭数が頻繁に変わるということもあるようである。
 私たちは、多くの学校でウサギの繁殖についての相談を受けた。雌雄の区別がつかないために分別もできず、避妊、去勢手術の予算もなかなかとれないため増えてしまって困っている、 というものである。一方で,子供たちのためにもっとウサギを増やしてほしいという学校もあり、学校間の動物の譲渡を仲介するシステムを早急に構築する必要性を痛感した。
 近親交配により種の正常な育成が失われていくことを危惧し、区外小学校と動物の交換を行っている学校もあった。
 今後、雌雄の分別の方法に関しては、区教育委員会や学校側の要請があれば関連の講習会を開催することなども考慮したい。それに先立っては、各学校で雄と雌が自由に往来できない ような構造の飼育舎を予め準備しておくよう要望したい。避妊、去勢手術の要望に対しては、葛飾区獣医師会内部で十分検討し、可能であれば善処したいと考えている。
 葛飾区獣医師会では、学校での動物飼育に際しては、飼育担当教諭、子供たちおよび飼育に携わる人間すべてがその飼育を負担と感じないような動物の種類と個体数を維持すること が肝要であると考える。

 飼育舎の状況や飼育方法については、各学校の飼育担当者の知識や認識の差が、歴然とその管理方法に現れているといえる。
 飼育舎の保持管理方法や動物種別の生物学的特徴、休日対策を含む理想的な飼育方法については今後、区教育委員会や学校側からの要望があれば講習会を開催したいと考えている。 今回の訪問調査の際にも、現場の担当者からは講習会を実施してほしいとの要望が多く寄せられた。このほか、人畜共通感染症についての講習会を希望する声もあった。
 また、葛飾区獣医師会が数年前から実施している「学校動物無料診療事業」については、ほとんどすべての学校で周知されており、事業の継続を望む声が圧倒的であった。これに ついては、一定の理解と評価が得られているものと確信している。
 斃死した動物の死後処理に関しては、社団法人東京都獣医師会が東京都動物霊園連絡協議会との間で学校飼育動物の埋葬に関する協定を締結しており、葛飾区獣医師会会員病院に 連絡していただければ無料で火葬、供養されることとなっている。私たちは、動物の遺体が校庭の片隅に埋却されることにより人畜共通伝染病が発生することを危惧し、これについても 既に各学校に連絡済であるが、関係者に対しあらためて周知することを希望するものである。